何秒かの空白の後、幸福の余韻に浸っていた体が一気に現実へと引き戻される。僕を受け入れることはできないけどもう少しキスしたかった、ってことでいいのか? 射精したことには気付いた…だろうな。彼女を傷付けるより自分が恥をかくほうが何倍もいい。でも問題はそれだけじゃない。慌ててトイレを借りたいと伝えると、とろんとした表情のままティナが問いかける。
「どうしたの……?」
「催した、だけだから」
「………」
 間違ってはいない。納得したとみて立ち上がりかけた僕の手を、ティナが掴んだ。

「みせて」
「……何?」
 今なんて言った? 可愛い声で何かすごいことを言わなかったか?
「いいから、みせて」
「………良くないっ!!」
 いい訳がない。収まらない勃起をどうにか鎮めたくて躍起になっているのだから。

「ティナさあ! 自分で何言ってるかわかってる!?」
「でも、苦しいんでしょ」
 気遣わしげな指が股間についとふれ、膨らみの中で性器がぬるりと動く。そのまま下へすうっとなぞる。
「…──ッ!」
 僕はのけぞった。ティナは、年齢的には男性器の扱いについて知っていて何の不思議もない。だがこんなことをする女の子だったか?……まさか、初めてじゃなかったりするのだろうか。まさか。あんなぎこちないキスするティナが? まさかそんなはずは。ないとは言い切れない……かもしれない。忙しいからって遠慮しないでしつこく連絡していれば良かったんだ…くそ……! しかし、経験があろうがなかろうがティナはティナだ。彼女の事だから純粋な、本当に純粋な親切心で言っているのかもしれない。それはそれで切ないが。その間もティナはじっと僕を見ている。何を考えているのか探ろうと、僕もティナの瞳を覗き込む。

 瞳の虹彩が作り出す影は、海の底で波に揺られるビー玉を見ているような、静かな恐ろしさを呼び起こす。吸い込まれそうだ……なんて悠長に見つめあっている場合じゃない、彼女を説得しなければ。いったい何をするつもりなんだよ、ティナの事だから想像の斜め上の行動を取る可能性大だ。しかし、しかし頭の隅で案外良い方に転がるかも、身を任せてみれば? とこまねく手が……──待てよ、彼女の瞳の色、こんなに深い海の色だったっけ? 光の加減で青にも紫にも変化する瞳には、様々な色が混ざり合って見える……。
 今、相対しているティナは、僕の知るティナなんだろうか? 都合のいい夢を見ているんじゃないか? 僕の願望が作り上げた、きれいで中々に家庭的でいい匂いがして唇がさくらんぼみたいにぷるんとしてエプロンの隙間から見えるお尻が可愛くて、控え目でそれでいて僕にだけちょっとエッチな理想のティナを? いつから? 家を出たのも夢? すると現実の僕は好きな人にも会いにゆけず一人こんな夢を見ているわけか。情けなくて涙が出そうだ……目が覚めたら今度こそティナに会いに行こう──

「たまくん!」
「…は、はいっ!」
 意識の浅瀬へ強制的に打ち上げられて目にしたのは、ベルトに手をかけ心配そうに見つめるティナだった。彼女に嵐の海から救われたなら、一目で心を奪われる自信がある。僕が固まっている間に自分の発言に恥ずかしくなってしまったのだろう、眉尻を下げ恥ずかしそうにしている。

「もう、しょうがない、たまくんね……」
 ……ティナは、ティナだった。大人ぶっていても声が上擦ってる。その台詞を言うのはいつも僕の方だったのに、立場が逆転したみたいだ。ふたたびティナの小さい唇がたった三文字の言葉をのせ、僕は魔法にかかったようにのろのろと言う通りにしていた。
 
 むわ、と青臭い臭気を放つ粘液をまとわりつかせ、性器が下着から勢いよく飛び出す。
「っ……!?」
 吐精してなお反り返っているものを前に、ティナは息をのみ硬直し、その後きっかり三秒で首元から額まで真っ赤に染め上げた。いい反応だと悦に入るのもそこそこに、ティナが目を伏せて頬に手を当てている内にざっと自分で拭いてしまう。と、即座に我に返り妨害される。こんな時だけ反応が早い。折りたたんだティッシュで拭き残しをぎこちなく拭う手つきに興奮を覚えつつ、自分でもつくづくひどい状態だと思う。好きな相手でもなければとても直視できない。…好きな相手? どうなんだろう、実際。今にも性器に触れそうになっている前髪みたいにどっちつかずの状態がもどかしい。というか近い! 近い近い顔が!
「そんなに顔を近付けないで…! 自分でできるから! 本当に!! 嫁入り前の娘がすることじゃないってば! あっ…」
 息が、息がかかってくすぐったいんだよ! ティナの唇が至近距離にあるだけで先走りが溢れてくるっていうのに、我ながらなぜ言う通りにしてしまったのか。
「濡れてるところがよく見えないの…ベッドに座って?」
「見えなくていいから!」
「じゃあ……脱ぐ?」
 僕の主張は……首を傾げて言うティナに頭を抱える。不本意ながら促されるまま体勢を変えると、彼女が僕の膝の間にひざまずく。こ、これは……いやティナだし! いくらなんでもありえないと浮かんだ想像を追いやる。

 濃い粘液がティッシュからこぼれ落ち、指に絡みついて糸を引く。目を背けたいが、視線はその箇所に吸い付いて離れない。羞恥に打ちのめされる僕をよそに、ティナは下着の内側を丁寧にぬぐっている。臨戦状態のモノのすぐ側で。この状況、何の罰ゲームだろうか…これが夢なら、僕はティナにいったい何を求めているのだろう……。
 べたつきの残る性器を煽るように薄い紙がふわ、とかすめ、紙越しに感じるさっきよりずっと熱い指先から、じんと痺れが膨らんでいく。凝視される興奮に拭き取るはしから先走りが垂れる。それを拭おうと慌てた指先がぴとぴとと直に触れ、思わず腰が跳ねた。
「…っ! っあ…!」
「あ……」
 先走りをこぼし、手の中で脈打つものを困惑して見つめるティナ。その喉がこくりと動く。うう、逃げ出したい……! ぎゅっと目を瞑り、もういいからと言おうとしたその時だった。
「っ!?」

 柔らかいものが触れた。
 何をされたのか、性器の先から駆け上がる快感と結びつけようとしてある感触に思い当たる。ティナが、先端に口付けていた。
「ちょっ、ティナ!?」
 いきなり口でなんて、展開が早すぎないか!? き、期待はほんのちょっといやかなりしてたけど……!
 ティナはやっぱり眉を八の字にして、「準備はいい?」とでも言いたげに僕を見上げる。ティナにとっては口が一番近かったとか、深い理由はないんだろう、たぶん……。
「勃ってるからってどうにかしなくていいの!」
「でも、」
「ティナ! …うわっ!」
「たまくん……ほんとうに、触られたくない?」
 手を添えてから聞くか……!
 正直言ってティナの顔と自分のものが同じ視界にあるだけで、様々な想像で頭が破裂しそうになる。こうなっては彼女はきっと何を言っても聞かないという判断を都合良く下し、やけくそ気味に叫ぶ。
「ああもうっ…触ってほしいよ! 今すぐ!」
 ティナは実に嬉しそうに顔を綻ばせた。この心安らぐ笑顔が、勃起を目の前にしていると誰が思うだろうか… そんなことを考えているうちにティナの白い顎が、色素の薄い唇が羞恥と期待でひくひく動くものに近づいてくる。生唾を飲み込み穴が空くほど見つめ、その瞬間を待つ。

 唇がそっ、と触れる。
「ぅ……!」
 先走りでぬめる鈴口から唇を離し、胸を押さえてほう、とため息をつく。雁首に位置を変え、左に、右にも一回。息が、漏れる。
「…! あ…っ…!」
 ティナの目が潤んで僕を見上げる。それからやさしく熱く、何度も、何度も、何度も。
「………あっ、ぁ! …あ、うぅ、く…」
 音も無く繊細に口づけられる。あの時と同じ、唇が触れるたびに「好き」と言われているようなキスだ。これをこのまま受けていたら達してしまう、と思うほどの。
 目眩がしそうだった。恐らく初めてのキスを経験したばかりのティナが、硬く立ち上がった、精液の生臭さの残る性器に指を這わせキスを降らせている。どうしていいのかわからないらしく、これでいいの? と問う瞳に、小さく頷いて応える。言葉を発するのが妙に気恥ずかしい。さっきから黙りっきりのティナも同じなのかも、と頬を染めて性器に口付ける彼女を見る。ティナがしてくれることなら何でも良かった。でもあまり顔をじっと見ないでほしい。それに、ほんの少しでいいから舌で舐めてみてくれないだろうか。焦らしてるつもりないんだろうけど、たまらないです、これ……。

 やがて控えめに吸い付きはじめた唇とぬめる粘膜のあいだから、ちゅ、ちゅっ、むちゅ、といやらしい音が立つ。先走りが伝う感触にすら感じるくらい感覚が研ぎ澄まされ、もう何度目かわからない、水気をふくんだキスの音に耳まで愛撫されている気分だ。
 目蓋を開けて下を向くと先走りが塗り広げられ、性器全体がてらてらと濡れ光る。それに口づけるティナの唇もまた熟れた果物みたいに煽情的だ。初めのころ強張っていた唇は柔らかくほぐれ、じわじわと性感を高めるように柔く優しく吸い付いてくる。一度一度が、拷問のような快感だった。
「あ、ひ…っ、…ぅ…、あぁ…!」
 唇が触れるたびに性器が震え天井を仰ぐのを、ティナは興味深そうに見ている。そっちもあんまり見ないでくれ……。先端から竿、根元まで満遍なく愛は降り注ぎ、そして、
「……っ!」
 がちがちなのは分かっていたが、後ろ側をキス代わりにするりと撫でられてやっと、腹に付くほどいきり立っていたと気が付く。やがてティナはだらしなく垂れ流され続ける先走りを認識したらしく、舌でぎこちなく舐め取りながらその湧き出る元へと辿りはじめた。裏筋をゆっくりと舌が通りすぎる快感に腰が震える。
「……っあぁ…く…!」
 やっと与えられた舌での愛撫に悶え、浮いた雫をやさしく吸い取られまた悶える。一度出していなかったら限界だったかもしれないと思えるほどに、僕はティナのキスで出来上がっていた。次々浮いてくる体液の玉を舐めとっていた唇は、それから少し迷ったのち……亀頭をやわらかく包み込んだ。

「…!! あぅ、あ、あ、あぁあ…!!」
 ……こんなに気持ちのいいことが、あって、いいのか? 両太腿にそっと置かれた手と、口に含まれた性器の先に感覚が集中する。熱く湿った口内にビリビリと焼かれ、麻痺するような灼熱感。ずっと思い続けた人が自分の性器を口に含んでいる……嬉しさと快感で視界は滲み、どうしようもないくらい反応してしまう。腰が浮いてティナの顔に性器を押し付ける格好になってしまうのが恥ずかしい。口から出るのはティナ、とかだめだ、とか形ばかりの言葉や喘ぎのみだ。これほど簡単に声が出てしまうなんて屈辱だった。涙目が見えないように、後ろに手を突いて顔を背ける。
「だいじょうぶ? 痛い?」
「んあっ…!」
 ちゅぽん、と口を離してティナが言う。その刺激にすらのけぞって喘いでしまう。
 不安気な声にぶんぶんと頭を振って応える。醜態を晒し通しで恥ずかしくて仕方がない。嫌われたくない、喘いだりしてイヤじゃないだろうか、気持ち悪くないだろうか? 見損なっただろうか?
 目を瞑って気が狂いそうな、もっと、とせがみたいような柔い責めに耐える……濡れた口内に先っぽをちゅうちゅうと吸われ、戸惑いがちに舌がちろりと這う。触覚だけでこれほど感じるのに、視覚が加わるとどうなってしまうのだろう! 欲望に負けて伺い見ると、ティナの小さな口から異様な淫らさで赤くグロテスクに光るものが出入りする。誰の? 僕のだ。信じられない光景、やっぱり夢だったりして。くらくらする頭で考えていると彼女と目が合った。熱に浮かされたような、とろんとした瞳で額に薄く汗を浮かべている。口からちゅぽちゅぽと出る音に恥ずかしそうに眉を寄せ、桜色に染まる肌、なのにどうしてそんなに、嬉しそうなんだよ……。

「ひゃま、くん…」
 名前を呼ばれその舌足らずな響きに思わず放ってしまいたくなるが、ぐっと堪える。すると優しく先端をつついていた舌が隠れ、唇が亀頭をすっぽりと包み、くびれた箇所できゅっと窄まった。ぷにぷにと弾力のある唇の輪が、硬く反り返ったくびれと裏筋をやわやわと食み、かと思えば吸い付き締め付けて刺激する。
「く、うぅ…っ」
 しょうがないじゃないか、気持ちいいんだから! これが、これがティナの唇、清楚でいやらしいティナの唇が、僕のを。もっとされたい、そう思うと同時に触れたくて仕方がない。人知れず描いていた図が目の前にあるというのに、キスしたくてたまらないなんて何だかおかしい。代わりに髪や頬を撫でると、まぶしそうに目を細める。猫みたいだ。頬を包んで耳の後ろをくすぐると、くすくす笑ってお返しとでも言うように口付けが降ってきた。おまけに最後僕を見ながら自信なさげに唇を寄せ、ぺろりと舐める。
 うう。甘い、甘すぎる。最高だ。ティナと恋人同士ってこんな感じなんだ……! 感極まって心中で雄叫びを上げる僕をよそに、ティナはせっせと奉仕を続ける。
「ん、ふ…んぅ…っ」
 淫猥な、いつものティナの清純さとは対極に位置する声そして音が、僕らが口と性器で繋がる部分から漏れる。だけどそれが今の彼女に似合いだと思うのは頭がおかしくなっているわけじゃない。淡い青紫の瞳に桜色が滲み、まるでティナが僕に首ったけで舐めしゃぶりながら欲情しているように見えるのも、寝具の色が映り込んでいるせいだろう。いやらしくて可愛い顔で一生懸命僕のものを舐めるティナ。いくらでも勘違いできる要素はあるのに、欲しい言葉だけはもらえない。

「……?」
 快感の狭間でモヤモヤとしているうち、愛撫に遊びが混ざり始めたことに気付いた。口の中の異物に慣れてきたらしい。張り出した感触が面白いのか、首の部分をぐるりと舐めて形を確かめている。納得がいったらしくなにやら得心した顔をして、口に含んだままれろれろと舐め回す。……そうだった。ティナはこう見えて興味を持つと止まらなくなる傾向があった。ゆっくりとした動きが徐々に速まる。さらには吸ったり舐めたり楽しそうだが、僕の方は楽しんでいる余裕はない。硬く張り詰めた粘膜を這い回る舌の動きに、腰の芯まで溶かされそうになる。
「…う、あ、ぁっ…うう……!」
 温かい口の中で熱くやわらかい舌が淫靡にうごめく。腫れ上がった亀頭をこね回され、限界まで反り返った窪みをぞりぞりと擦られ、おまけに裏筋を舐め上げられる。そのくせ、太股に添えられた手は微動だにしてくれない。僕の腰がガクガク震えてるのを知ってて、だ。ヒドい。腰の奥でどろどろに溶けている塊は行き場なく留まって、熱は上がり続ける。お預けをくらっているようでたまらなくもどかしい。弄ばれるような被虐の快感に、いきたい、いかせて、もう許してくれと懇願しかけ、あまりの情けなさに口をつぐむ。
「…ぐ、ぅ…ティナぁっ…」

 唐突に、ティナが口からものを抜いた。ふぅふぅと息をついて湯気が出そうに熱いものを見、僕を見あげる。
「…っ…疲れちゃった?」
「ん…大丈夫…」
「……あのさ、ティナ、手で…」
「て……?」
 ティナは射精寸前で愛撫を止められ、涙を流してびくびく震えるそれと平静を装う僕とを、きょとんとして見比べる。
「うん、さわって…いや、しごいてほしい」
「……!」
 舐めるのに夢中で思い当たりもしなかったのだろう。こういう感じで、と手で示すとうんうんと頷き片方の手で根元を支える。指先がくしゃりと陰毛を撫で、熱くしっとりとした手のひらが硬い棒に吸い付いてさすり、きゅっと握った。覚束ない手が上下にしごくとぬちゅ、にちゅ、と卑猥な音が立つ。

「う、あぁっ!」
「気持ち、いいの?」
「あっ、う、うん、きもち、いっ、あっ、あ…!」
 僕の反応に気を良くしたのか、ティナの唇の両端が持ち上がる。答えきる途中で手の動きが速くなり、更に左手が愛撫に加わる。熱く柔らかな手のひらで先端を包み、頭を撫でるようにぬるぬると撫で回す。
「…これは?」
「あっ、あ、ひっ、ティナ、やめっ、…!」
「きもち、いいのね……ふふ、嬉しい。くちと、どっちがいい?」
「く、くち、口がいい…っ」
 ティナはちょっと不服そうにして頷く。まだ果てるわけにはいかない。僕のを咥える姿をあと少し、目に焼き付けておきたかった。

「あ、む…んっ、ん…」
「…あ、ああ、く…!」
 とろとろと先走りのあふれる先端に口づける。眉を寄せ小さくのどを鳴らし、舌と口で吸い付きながら飲み込んでゆく、その仕草が意地悪で焦らすみたいにゆっくりだ。本人は一生懸命なのかもしれないが、いやらしいことこの上ない。
 唇は性器の中ほどで止まった。そこから根元までを白い手指でしごきたてながら、目を閉じ吸い付いたまま一心に裏筋を舐り出す。ああ、僕の一番駄目な場所、もうわかっちゃったんだ。

「く、ぉ…! あ、あっ、あぁっ、ううぅっ!」
 痛覚を極限まで弱く甘くしたような感覚が性器をじんじんと包み、果ては体全体を支配する。握られ、扱かれ、吸い付かれ舐め回され、気持ちが良すぎておかしくなりそうだ。根元までくわえこむ事を知らない、だが丁寧な愛撫にこらえきれず小さく腰を突き上げる。
「んっ、んん……っ」
「はぁっ、は、っ…ごめん…ごめんティナ…」
 苦しそうに彼女が何か言おうとするが、舐めながらでは上手くいかない。謝る言葉とは逆にもっとティナに愛されたくて腰が動いてしまう。首筋からうなじに指をすべらせティナの頭を撫でる。前髪を梳くとくすぐったそうに身をよじり、顔を上げうっとりと微笑む。ティナの瞳が一層潤んだように見えた。胸に熱い涙みたいなものが──実際僕は泣いていた──こみ上げる。

「っは、はっ、ぁ、っく、ティナ、ティナ…好き、好きだ、……好きだ!」
 こんな時でしか面と向かって言えないなんて、全く説得力がない。それでもティナはにっこりと頷いた。応えるように熱い舌が、細い指が絡みつく。
「…う、ぁ、ティナ、いきそう、イく……!」
 口に放つわけにはいかない。このまま彼女にすべてを受け止めてほしい。相反する思いを抱きながら、一秒でも長く彼女を味わっていようと歯を食い縛る。責め続けられて過敏になった鈴口から精液を吸い出すように口内がうごめき、射精感を抑えられない。最初の射精が口内で弾ける。

「ううっ、…っ! …!! っう…あぁ! っあ、あ、ぁあ………っ!!」
 勢い良く、ティナの舌の上へ精を放つ。頭を押さえられて苦しいだろうに、射精の間も舌と唇で吸い付かれ、頭の中が快楽で塗り潰されてゆく。たまらない、全部出したい。でも……、四度目の律動で迷って身じろぎしたためにティナの口から外れ、その刺激に抑制を失ったものが暴れる。
「んぅっ…いやぁ……!」
 唇から亀頭が現れた瞬間、白い粘液がティナの顔にぶちまけられた。口の端からこぼれる白い筋と、か細い悲鳴に背筋が悦び震える。続く放出を止めようと手のひらで性器を覆うが、指の間から飛び散り何の意味も成さない。まき散らされた液体が彼女の顔や胸元を何度も汚し、エプロンにぱたぱたと白い染みが垂れ、増えていくのを呆然と眺める。もっとかけたいとすら、思った。